Vol17. 2012年5月 藪腰 梨里さん 芸術工学部1期生


エイトデザイン
ウェブ・グラフィックデザイナー

藪腰 梨里

1期生 視覚情報デザイン学科 平成11年度卒業(伊藤研/横山研)
大学院芸術工学研究科博士前期課程 平成13年度修了(横山研)

―現在の仕事について教えてください。

リノベーション専門の名古屋のデザイン事務所「エイトデザイン」で働いています。私はウェブとグラフィックと、デザイン全般を担当していて、会社のホームページや販促物など印刷物のほか、そういったものに載せている写真も撮ったりします。

会社への問い合わせのほとんどはホームページからで、最初の入り口になるウェブやその写真がち魅力的でないと、お客さんも来ないしかなり責任重大です。

写真は前いた会社でも必要で、やってるうちにどんどん好きになっていきました。

建築写真のようにピシッと歪みなく撮るのではなく、スナップ写真のようなカジュアルな雰囲気の方が、「ライフスタイルに合わせて楽しい暮らしをつくる」というリノベーションの提案にあっていると思うので、それが伝わるよう努力しています。

―前職は何をされていたんですか?

大学院修了後、新卒で創健という建設コンサルタントに入社しました。省庁や自治体からの依頼でまちづくりや道路計画などをする会社で、そこでウェブサイトや広報誌を作る仕事をしていました。取材に行って写真を撮って、ちょっとした記事を書いて…。ダムや港などの一般の人が入れないようなところにも行けて楽しかったですよ。

その後、リノベーション事業をしている会社に転職しました。もともと古い建物が好きで、おもしろそうだなと思って。そこでもウェブデザイナー・グラフィックデザイナーとして会社案内やウェブ、広告をつくっていました。エイトデザインはそこで出会った仲間が立ち上げた会社です。

―会社は変わってもずっとウェブとグラフィックのデザインをされてきたんですね。大学時代もウェブを専攻していたのですか?

情報処理の授業で基本のHTMLを学んだり、趣味でホームページをつくってはいたんですけど、会社に入ってから覚えたという感じです。でも、ウェブを教えてくれる先輩はいなかったので、本を見るなり、かっこいいなと思うホームページのソースを見て真似してみるなり、手探りでやってきました。自己流なので自分のやり方が正しいのかという不安はありますけど、現場に放り込まれるというのは、すごく勉強になりますよ。研究したり調べたりするのは、楽しいですし。オタクなんです、きっと(笑)。

―ホームページ、とてもおしゃれですね。つくるときに心がけていることはありますか?

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エイトデザインのサイト。「『楽しむ』をデザインしよう!」という言葉どおり楽しげな暮らしの空間がいっぱい


手作り感やアナログ感を意識してます。古い建物を改修して、味のある暮らしを提案しているので。あとは、お客さまの好みはいろいろなので、特定のテイストに偏り過ぎないようにしてます。できるだけシンプルに、見やすく、わかりやすく。

―エイトデザインはスタッフの皆さんお若いですね。

2010年4月に立ち上げたんですが、メンバーがだいたい30歳前後でした。みんな趣味は違うんですけど、好きなものやつくりたいもの、目指す方向が一緒で。それぞれが今までやってきた経験を活かして働いています。
仕事はこと細かく指示をもらって作業をするのではなく、個々で考え判断することが多いです。もちろん、途中途中でデザインを見てもらって意見を聞いたり、毎週ミーティングをして会社の事業もどんどん変えていったりもします。

この2年で40件のリノベーションをさせてもらいました。実績がないとお客さまに事例を見せられないし、信用もいただけないし。皆がむしゃらに頑張ってます。
リノベーションだけでなく、オリジナルの家具をつくったり、2011年10月にはカフェと家具の複合ショップ「ハチカフェ」と「ハチカグ」をオープンしました。カフェや雑貨店はリノベーションとは別の担当者がいますが、ウェブサイトやショップカードなどは私が作っています。

―仕事をしていて、よかったなと思うことは何ですか?

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施工事例を紹介するペーパーも藪腰さんが制作したもの


やっぱりお客さまがすごく嬉しそうにしているのを、間近で見られることでしょうか。あと、好きなデザインの空間を写真に撮ったり、好きなことやってお客さまが喜んでくれるならこんな楽しいことはないです。

ま、好きなことを仕事にしたというか、仕事にしていたら好きになったということもあるかもしれないですね。写真も学生のころはあまり撮っていなかったので。

お客さまも個性的な人が多いので、いろいろ刺激を受けます。新築のマンションを買うとか、注文住宅を建てるとか、賃貸に住み続けるとか、いろいろな選択肢があるなかでリノベーションを選ぶという人ですから。

―仕事を楽しんでいらっしゃるんですね。学生時代は何をどんな風にすごしていましたか?

一期生で初めての学生で人数が少ないし、ゼミの先生だけでなく、たくさんの先生と仲よくさせてもらいました。
大学院では横山先生の研究室にいてプログラムを作ってました。生体情報に関する研究で心拍数を解析して…と、ウェブとは違いました。直接は今の仕事とあまりつながってないかも。

何をやっていたからこうなったってわけではないです。先のことなんてわからないし。私の場合は明確な目標を決めて進んでいくタイプではなかったので、そのときどきにおもしろそうだなって思った方に進んでいったらこうなりました。
でも、大学でグラフィックだけでなくいろいろなことができたのはよかったと思います。私たちのころはけっこう何でもやっていて、都市計画とか建築の授業もひと通り受けました。そういう経験から建築に興味を持って、今の仕事に就いたのかもしれないですね。

―建築の授業も受けていたんですね。今後やりたいことはありますか?

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革や鉄などの無骨な素材がかっこいいオリジナルの家具


今までの経験からすると、そのときになってみないとやっぱりわからないですね。
でも、楽しいことがあればすぐに動けるように、フットワークは軽くしておこうかな。あまり考えすぎてもなって思います。

―先輩にとって芸工とは何ですか?

すごく難しい質問ですね。試行錯誤の場だったんじゃないでしょうか。先輩のいない、前例のない状態でやってきて。それが今でも息づいているかもしれないですね。
学生さんは、勉強以外のこともあれこれやっておくといいんじゃないかな。芸工にはせっかくスタジオや工房があるので、いろいろ作ってみたりするといいと思います。

インタビュワー

浪崎唯
15期生(平成22年度入学)デザイン情報学科

―インタビューの感想―
梨里さんは2回転職されたということですが、どの職場でも楽しみを見つけながら仕事をしているというポジティブな姿勢がとても素敵だなと思いました。このような柔軟な考え方や行動ができるというのはデザイナーに限らずどの職業にも大切なことだと感じました。


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