Vol19. 2013年1月 杉本 佳奈さん 芸術工学部7期生


株式会社トレジャーワークス
デザイナー

杉本 佳奈

7期生 視覚情報デザイン学科 平成17年度卒業(川井研)
大学院芸術工学研究科博士前期課程 平成19年度修了(川井研)

―杉本さんの仕事について教えてください。

地元、静岡の広告会社でデザイナーをしています。入社して最初の一年間はデザイナー、2年目から約3年間はチラシのディレクションを行う仕事に携わって、今年の3月くらいからまたデザイナーに戻りました。

うちの会社では、デザイナーがillustratorやPhotoshopを使って広告物の制作をして、ディレクターが営業がクライアントさんから聞いてきた要望を受けて、内容やレイアウト、全体の構想を考えてデザイナーに伝えます。

仕事の流れとしては、まずは営業がクライアントから仕事の依頼を受け、打ち合わせをします。その内容を営業が原稿として書起します。基本的には打ち合わせ内容や必要事項の箇条書きであったり、デザインのイメージや制作物のサイズが書かれています。それを見て、デザイナーが実際に制作を進めます。ただ、うちは12人程の小さな会社なのでデザイナーやディレクターがコピーを考えたり、進行管理や雑用もします。営業にしろ、デザイナーにしろ、仕事の幅は広いと思います。職種で専門分化されているのは、規模の大きな会社とかじゃないでしょうか。

広告は目的が明確にあるものです。業種によって色々な条件も存在します。その中でクライアントさんの要望を叶えつつ、「どうしたら伝わるか」を考えてデザインを進めます。また、クライアントさんによってはっきりとした好みのある人もいれば、完全にお任せな人もいて、相手によって全然変わるのでそれに合わせた対応を心がけています。

―大学の課題とは制作の考え方がずいぶん違いますね。ほかにはどんな違いがありますか?

広告をつくりあげるまでに多くの人が関わるので、営業やデザイナーなど周りの人と協力して、いかに円滑に進めるかを考えることも仕事ではすごく大事です。デザイナーとしては、営業から伝わる情報がクライアントさんからの絶対条件なのか、営業の考えなのかを読み解いて、提案できることはするようにする。ディレクターとしてはデザイナーに依頼をする時に限られた予算やスケジュールの中で気持ちよく仕事をしてもらえるよう、こちらでデータの整理をしたり、わかりやすい原稿であるかどうかを常に意識して進めていました。また、オーダーした原稿内容通りに仕上げてくる人、こうした方がいいのではと提案を含めて仕上げてくれる人など、デザイナーによって違うので、原稿の書き方も変わってきます。

制作のスピードも学生の頃とは全然違いますね。以前ディレクターとして月に100本くらいチラシをつくっていたときは、原稿を書くのに時間をかけ過ぎないようにしつつも、見てすぐにつくれるような原稿を心がけていました。同じ店舗のチラシは同じデザイナーさんに依頼して効率よく進められるようにするなど、進行の仕方でも工夫できるところはあって、考えて進めていました。

―人とのコミュニケーションが仕事全体の進行に大きく影響するんですね。Illustratorとかソフトはきちんと使えるようになっておいた方がいいですか?

正直、技術の部分は社会人になってからでも何とかなります。私は大学生のころはパソコン嫌いだったので、就職するときも一応使えますって入社したんですが、大学時代の知識は本当に微々たるものです(笑)。今ではillustratorもPhotoshopもそこそこ使えます。仕事になれば覚える速度も濃度も全然違いますし、もしディレクターを希望するのならできなくても大丈夫です。もちろん、できた方が仕上がりを想像できるのでいい面もありますが。

これは私の上司の話ですが、大学生は考えることを学んで、専門学校生は技術を学んでくる。最初は専門学校生の方がソフトも使えるけれど、自分で考えて、広告を組み立てられるのは大学生、と言っていました。そういう人はディレクターもできると思います。

―ディレクターって今まであまり意識していませんでしたが、芸工生には向いてるかもしれませんね。

杉本さんの勤める広告会社のサイト

私は学生のころから企画をやりたかったというのもありますが、デザイナーよりもディレクターの方があっている気がします。伝えたいことをどう表現するかを考えるのがディレクター、実際に広告を制作して表現するのがデザイナーだと思うのですが、私は考えることの方が好きなので。

余談ですが、学生のころはとりあえず、色々なところに旅行とか遊びに行って、見ておくといいと思います。そして、日本人は写真を撮り過ぎてよくないってたまに聞くけど撮った方がいい。私も海外旅行は行ってよかったです。海外の公園にあったゴミ箱とか道に敷かれてるタイルとか、ヨーロッパは観光地でなくても何気ないところがおしゃれですよ。でももっと見ようと思って行けばよかったと思うし、写真にも残しておけばよかったと思う。デザインやる人間は見ようと思うことがすごく大事。ぼーっと歩くことも大事なんだけど、意識していると見えるものが違うから。

そうすることで、引き出し増やすことができると思います。だから、遊んでおいた方がいいですよ。社会人になってからは長期休暇取りにくいですし。

―技術を学ぶ以外のことも大事なんですね。ほかに学生時代にしておくべきことってありますか?

デザイナーになりたいのであれば、絵を描くことでしょうか。CGをおこすにしても、グラフィックデザインをやるにしても、絵的な構成力や色の使い方とかが分かっていると便利だと思います。旅行に行くならスケッチブックを持っていくといいと思う。

あと、周りの同級生や先輩に相談してヒントをもらっておくといいと思います。先生とかも遠慮せず、研究室に押しかけちゃえばいいんです。ほんとうに忙しい時でなければ、学生が来てくれるのは嬉しいと思います。

図書館を活用しておくのもいいかもしれません。本を読むと頭が作れるから。気になる雑誌の特集でもドラマ化された有名な話でもいいし、本の表紙を見るのもいい。芸工の図書館はそこらへんの本屋よりいろいろな本がありますよ。結構、違う分野の本もおもしろいと思います。

芸工は、課題の数も多くはないし、今思えばほんとはいろいろやれるはずだから、興味がちょっとでもあることは何でもやっておいた方がいいですよ。授業だけでは足りないから。芸工はある意味自由だし、いろいろな場所にヒントが落ちていると思います。自分次第でどうにでもなる。ちょっと可能性が広すぎて大変なところもありますが。大学の掲示板もワークショップのお知らせとかいっぱい貼ってあるはずだし、ユニークな先生も多いのでおもしろい場所だと思います。

―ところで、就職活動はどうされてましたか?

学生のうちにしておくべきことなど、たくさんアドバイスをくださいました

全然だめでした(笑)。たまたま地元の広告会社に受かり、現在も続けています。特に広告業界を希望していたわけではないのですが、ものづくりに関わることができる会社を探していました。

記念受験でもなんとなく興味があるようなところも試しに受けると勉強になると思います。面接の練習にもなりますし。私は自分から動けないタイプですが(笑)、なんでも興味を持ってやってみるといいと思います。意外と新しい発見とか、自分の向き不向きとかが分かるので。

公務員とか総合職を受けてもいいと思います。デザイナーではなく、アーティストのように自分の好きなものをつくりたいタイプであれば、仕事は定時で終わって夜や週末に作業してもいい。そういうのも人生を楽しむひとつの手段ですから。自分の可能性は自分で拾って行かないとね。

―たくさんのアドバイス、ありがとうございます。最後に一言お願いします。

学生のうちは図々しく生きた方がいいですよ(笑)。話聞きに行ったり、旅行行ったり、ノリと勢いで行っておいで。

どうやったら楽しいかを考えるのも、すごくいいこと。ただ友だちと遊んでる時でも、どうやったら楽しいかなって考えるの。日常的なことでもいいし、イベントの時に張り切るっていうのでもいいし。

デザイナーとかクリエイターは、楽しませることが大切だと思うから、その方法を学んどかないと。自分が楽しいって思うことは、仕事で大きなヒントになってくれるはずですよ。

インタビュワー

浪崎唯 15期生(平成22年度入学)デザイン情報学科
―インタビューの感想―
仕事の上では技術だけでなく、人と人とのやりとりがとても大事なんだと改めて考えさせられました。

吉岡佑梨 15期生(平成22年度入学)デザイン情報学科
―インタビューの感想―
社会人になると、ある種類の仕事をずっとやっていくようになる点が、学生と違い印象に残りました。学生時代に後悔がないよう、やりたいと思ったことにどんどん挑戦していこうと思いました。


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