Vol8. 2010年7月 島 麻絵さん 芸術工学部3期生


 
島 麻絵さん

3期生視覚情報デザイン学科 平成14年度卒業
水野研究室/溝口研究室 (卒業制作:水野研/卒業論文:溝口研)
社会福祉法人わたぼうしの会 たんぽぽの家 スタッフ

—芸術工学部からどのようにして福祉業界へ就職されたのですか?

学外のアート系のワークショップで「障害のある人と働いている」
という人に出会ったのが最初のきっかけです。
その方は、授産施設(就労が難しい障害者に就労の場や技能取得を
手助けする福祉施設)で働いており、その時はちんぷんかんぷんで、
介護をイメージして大変そうとしか思いませんでした。
しかし後日、その施設の手織りの展示を見に行くと、障害のある人がつくったマフラーや、
スタッフがつくった人形など、おもしろいものがたくさんありました。
その時にこういう仕事があるんだと知り、その後、「なごやボランティア・NPOセンター」で
「たんぽぽの家」という社会福祉施設の資料を見つけました。
アートサポーターやボランティアの募集のほか、メンバー(障害のある人)と一緒に
銭湯に行こうという企画もあり、おもしろそうな施設だなぁと、4年生の冬に
見学しに行きました。自己紹介のために、課題をまとめたものと、
在学中にサークルで毎月発行していた「カヤバ一揆」というフリーペーパーを
持っていったところ、対応してくれたスタッフの方が、興味を持ってくれました。
何度かたんぽぽの家に通ううちに、「CHIRORI」という雑貨店を紹介され、
アルバイトを始めることになりました。

—福祉にそのような関わり方があるのですね。CHIRORIとは具体的にどのようなお店なのですか?

グッズを見せていただきました。ひとつひとつ表現方法が全く違い、とてもおもしろく、かわいいグッズばかりでした。

全国の福祉施設でつくられた、陶芸、手織り、木工などの手づくり雑貨や食品を扱うお店で、障害のある人が働いています。1996年に、「まほろば・楽市・楽座」という、奈良町界隈(CHRORIがあるエリア)のギャラリーや空き店舗で施設の商品を大々的に展示販売するイベントがはじまり、その流れでCHIRORIが誕生しました。当時、福祉施設の商品は、地元のバザーでの販売が主流であり、まほろば・楽市・楽座は画期的だったと聞きます。
私自身は、CHIRORIで、商品のセレクトや通信やチラシの制作などをしていました。全国にはものづくりをしている施設が
たくさんありますが、障害のある人がつくったものを面白いと思い、発信していこうという意欲のあるスタッフがいるかどうかで、商品も変わってくるといえます。
ところで、CHIRORIでは、芸工の近くにある「うえの授産所」のカップも取り扱っていました。
芸工生のときにそこのバザーに行ったことがありましたが、
障害のある人の働く場所であるということに気付きませんでした。
特にこの分野は接点がない人は全く知らないということがあるので、
もうちょっと気軽に歩み寄ることができるといいなぁと思います。
いきなり障害のある人と接するとなったら、最初は緊張感やためらいがあると思うけど、
きっかけとして“もの”というのは入りやすいですよね。

—いつたんぽぽの家のスタッフになられたのですか?また、たんぽぽの家はどのような活動をされていますか?

CHIRORIは2007年にたんぽぽの家と事業統合しました。
その際にCHIRORIのアルバイトからたんぽぽの家の正職員になりました。
たんぽぽの家でのメンバーの活動は、絵画、陶芸、手織り、カフェ、ショップ、企画部など、
多岐に渡ります。たんぽぽの家では、メンバーひとり一人に希望を聞きながら、
本人にあった働き方を提案し、プログラムを作成します。
また、たんぽぽの家は障害のある人自身の夢を実現、個性をのばすという考え方を持っており、
それはスタッフに対しても生かされているので、決められた仕事ばかりではなく
自由にアイディアを出して考えていけます。
たんぽぽの家の特徴として、作品展やセミナーなど、外に向けた活動が多いことがあげられます。
年に1回「アート化セミナー」といって、福祉施設のスタッフに向けた、
施設でのアート活動や商品化に関するセミナーをやっており、
全国から関心のある人たちが集まってきます。
また、海外からのお客さんも多く、去年は韓国のアーティストがたんぽぽの家に
1ヶ月以上滞在し、メンバーと一緒に制作しました。
本当に色々な人とのつながりが生まれやすい職場です。
7月23日から31日には、可児市文化創造センターで、
「エイブル・アート展」が開催されます。
たんぽぽの家のメンバー他全国の障害のある人の作品が展示されますので、
ぜひお越しください。

−おもしろい企画ばかりですね。現在はスタッフとしてどのようなお仕事をされていますか?

エイブルアート・カンパニーのパンフレットを見せていただきました。登録されている作家さんの作品は個性があり、魅力的でした。

CHIRORIから始まった経緯もあり、今でも、福祉施設の商品を扱う仕事をメインにやっています。CHIRORIの他、イベントや商業施設での販売の機会も多く、場所に応じた商品をセレクトしたり、企画などもします。その他、たんぽぽの家を含む3つのNPOが共同でやっているエイブルアート・カンパニー(以下、カンパニーと表記)にも関わっています。この事業の目的は、障害のある人のアートを仕事につなげることです。作品を使いたい人と障害のある作家の間に立って仕事の仲介をしています。障害のある人の作品をデジタルデータ化して、それらを企業に貸し出し、著作権使用料を得ています。
窓口がはっきりすることにより、企業はアクセスしやすく、作家に対して適切な対価が支払われるようになりました。

—例えばどのような依頼がきますか?

アパレルメーカーより、ジャマイカというテーマで
描き下ろしをしてほしいという依頼がありました。
カンパニーが間に入って作家の体調やスケジュールの調整をしました。
依頼に応えられないタイプの作家であれば断ることもありますし、
作家をバックアップしている施設に相談しながら、情報を集約してお客さんに伝えたりもします。
スタッフは現場を体験してきているので、施設や作家の状況もよくわかります。

—話は変わりますが、研究室を悩んでいる子が多くいます。どのように研究室を選べばよいかなど、アドバイスはありますか?

福祉業界でのデザインの必要性を感じるとともに、デザインはあらゆる分野にアプローチできるのだと思いました。

私は水野先生がやっている現代音楽、実験的な音楽に興味があり、先生のキャラクターが好きで水野研究室を選びました。溝口研究室も同じ理由で選びました。研究や制作の内容ももちろん大事だけど、人柄や相性で選んでもよいのではないでしょうか。
6月中旬に水野先生の矢田ギャラリーでの展示を見た時に、こんなマニアックな分野をやっている人もいて、芸工って幅広いなぁって改めて感じました。だから学生が迷うのかも。
学生時代に思ったのは、早いうちにやりたいこと、専門を見つけられた人はラッキーだなぁということ。私は見つけられなかったので、そういう人たちがうらやましかったです。

—オープントークにも参加いただきありがとうございました。現役生へのアドバイスや感想を教えてください。

学生のうちは動きやすく、出会った人がその後の人生ずっとつながることもあるので、
学外に飛び出して色々な人やものに貧欲に会いにいってほしいと思います。
違う大学の講義を聴きにいってもいいですね。オープントークへの参加は緊張しましたが、
自分の仕事を学生に知ってもらうことは大切で、すごくいい経験をさせてもらいました。
普段そんなに大学生と喋る機会もないので楽しかったです。
リアルな声を聞くことが就職活動をする上でのヒントになれば、参加者としては嬉しいです。
発表者の卒業生の中には自分も知らない人が多かったので、仕事の話を聞くのは新鮮でした。

—島さんにとってやりがいとはなんですか?

おもしろさを追求するということが生きるモットーです。
そこに貪欲で、おもしろいものを見たら誰かに伝えたくてしかたないんです。
会わないはずの人と人をものを通して結びつけられる。
福祉の世界であるけれど、おしゃれな雑貨店に負けないグッズができ、
またそれが売れると、親、本人、友人が喜ぶ。そこにやりがいを感じます。
インタビューワ

山下 咲衣子
13期生(平成20年度入学)デザイン情報学科
プロダクトデザイン志望

―インタビューの感想―
まさに大学で学んだことがそのまま生かされているのだろうなと感じました。
外に出て、自分から出会いを見つけにいくということは大切であると思いました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA